プチ整形に手を出す。
私は昔から目の下にある膨らみがコンプレックスであったため、この度婚活を始めるにあたり、どうにかできないものかと調べたら、ヒアルロン酸注射で一時的ではあるが改善されるというではないか。
思い立ったが吉日。さっそく美容クリニックにカウンセリング予約し、行ってきた。
駅から少し歩き、路地に入った所の居酒屋やらが入っている小さなビルの中にそのクリニックはあった。
狭い個室に通され、事前のカウンセリングシートに気になる部分を記入し、予算はきつかったが多めに見積もって10万円に丸を付けた。
私よりも若いと思われる綺麗なお姉さんが入ってきて、一通りカウンセリングを受けた後、若い男性の医師が入ってきて詳しい説明を受けた。
「今は30代だからそのぐらいかもしれませんが、これから年を取ってくるとどんどん大きくなって、最終的には涙袋とつながって目の下凄いことになりますよ。」
「ヒアルロン酸注射は一年おきくらいにずっとやり続けなければいけません。脂肪をとる手術をすれば一回で終わりますし、コスト面でも遥かに安く付きます。」
「あなたのように、遺伝でなっている方は20代からこの手術受けてる方多いですよ。」
手術か…。正直そこまでは考えてなかったが、医師の言う事が本当ならば、手術をしてしまったほうがいいだろうと思った。
それから医師はやはり美容のプロであるから、私が気になってなかった部分までご丁寧に指摘しまくった。
自分の顔の欠点を面と向かって指摘されるなどあまり経験した事がないが、手鏡を持たされ
「ほうれい線もありますね?あと笑ったときに目尻に皺がかなり寄ってます。この皺って女性にはいらないんですよね。男性はあると何か紳士的に見えていいんですけど。それからシミとソバカスも結構ひどいですね。」
などと、自分の顔を見ながら言われると、言われた部分全てが気になった。
「これが一通りあなたがした方がいい施術です。この中から必要ないと思う物は削ってもらって大丈夫ですから。」
と医師は紙に書き込んで出て行った。
目の下の脂肪を取る手術、ヒアルロン酸とボトックスの注射、シミ、ソバカスにレーザーか何かを当てて薄くする施術。
もう指摘されたところに関してはすべてやってしまいたいと思ってしまった。何も本格的な整形手術を提案されたわけでもない。
問題は金額だ。
お姉さんが全ての施術をした場合の合計金額の見積書を持ってきた。
固まる私。
お姉さん、「モニター料金もありますよ。」とモニター割引を提案。
それでも決断しかねる私に、畳みかけるように
「本当はここまでできないのですが、特別に一回¥33,000のレーザー施術を無料でもう一回付けたうえで、合計の料金もあと少しお下げします。」
電卓を素早く叩き私の前に差し出した。
「正直かなりお安いかと思います。」
説明をするだけのお姉さんだと思っていたが、そこまでの権限があるのか。
「私もしてますけど、本当におすすめです。」
お姉さんの肌はツルッツルであった。
私「分かりました。それでお願いします。」
契約してしまった。
たくさんの書類を書かされるも頭の中は真っ白。
やばい。やばい。
仕事決まってないのに。
私はこんな所に来て何をしてるんだろう。
私はどこに進んでいるのか。生きていけるのか。
ここへ来て3時間くらい経っただろうか。
やっと解放され、お姉さんがエレベーターまでお見送りをしてくれる。
「本当に変わりますよ。絶対にやって良かったと思うと思いますよ。」
そう言ってにっこり笑った。
私は力なく「ハハハ…」と笑った。