7月26日(木)
7月26日(木)
今日は一生涯忘れられない日になるだろう。
出産の次に心を揺さぶられた日だった。
ハローワークの就職相談の二回目の面談に行った。担当者は前回と同じHさん。
私は昨日派遣会社に登録に行った事を話し、エントリーした仕事をみてもらった。
そしてものすごくいい職場だと言われ、ほとんど心は決まっていると話した。
すぐに仕事が決まりそうな事を喜んでくれるかと思ったが、Hさんの反応は予想外なものだった。
「すごくいい職場って言われたって、それは人それぞれの感じ方次第だから。」
なるほど。昨日派遣会社で話を聞いた時に感じた違和感はこれだったか。
確かに私は以前すごく環境がよく、中々人が辞めない職場に勤めた事がある。同期はここの仕事がとても好きで、できればずっと続けたいと言っていた。
だが、私はそこの職場が耐えられず、半年で辞めた。環境がいくら良くても仕事内容がどうしても合わなかった。
だからHさんの「いい職場は人それぞれ違う」という言葉はすごく納得できた。
それから年齢的にもそろそろ正社員の仕事を見つけなければならないと、焦っている事も伝えた。
「正社員になったからってそれで安定するの?正社員になればその仕事、ずっと続けられるって保障はないよね。」
「正社員に拘らないほうがいい。いくつになっても挑戦はできる。私は50すぎてやっとこの仕事に出会えた。」
そしてHさんは唐突に私にいつも読む雑誌は何か、と聞いてきた。雑誌はあまり読まないが、本はほぼ毎日何かしら読んでいる。その事を伝えると、さらに
「どんな本を読んでるの?」
と聞かれたので、エッセイやノンフィクション、小説はサスペンスとかファンタジーではなく、割と身近に起こりそうな題材のものを読んでいると言った。
Hさんはそれを全部メモして何やら考えてから言った。
「…多分、あなた人に興味があるんだろうね。」
「それと、個人の話ばかり読んでる感じからすると、組織に属してみんなで仕事をするというより、組織に属したとしても、ある程度自分ひとりで決めて出来る仕事が向いていると思う。」
「いつも読んでる本とか雑誌って、実は自分がやりたい事とか、向いてる仕事に通じてるんです。」
凄い、と思った。
Hさんは職業カウンセラーなのでそういった心理的なアプローチもできるらしい。
「あなたが何をしたいか、何を大切に思っているのかもう一度ちゃんと考えてみて。」
「弱みをつぶしていくんじゃなくて、強みをどんどん伸ばした方がいい。」
Hさんの言った言葉を全部ボイスレコーダーで録音したい、と思った。
一つも聞き逃したくなかったので必死で聞いた。
言葉や思考となって出てこない、私の心の奥底のほうにあった気持ちが、彼女の口から次々と出てきた。
Hさんの前で号泣。
あんなに人のために一生懸命な人っているんだな。
Hさんに出会えて本当に良かった。
ずっと変わらなきゃ、変わらなきゃって思ってたけど、違ったんだな。
ありのままの私が出来る事がある。それだけだったんだ。
今はまだ放心状態。これからの方向性をしっかり今から決めていく。
今日の事を母に話すと、
「そんな事で泣くの?」
「だから資格取りなさいってずっと言ってるじゃない。」
「もっと近くで働きなさいよ。」
と的外れな事を言われた。
昔から母には私の思いが伝わらない。
超真面目人間の母には、いつまで経っても安定した仕事に就かない私は、理解不能の不可思議人間なのだ。